埋めて
     ください。

五月病という病気にかかった人間がここにいる。

「いいから埋めてよ、ポンちゃん!」
「いやポンちゃんじゃないって」
「そこかよ!」

「五月病だからそのうち治るって」
「いや五月じゃないし」

「それもりも風邪引くって、寒いって2月に半袖とミニじゃ」
「はっ!男の癖に弱気な、そんなのはあたしが認めない。さあ、埋めてくれポンちゃん」


そう言って雪を掘った穴の中に佐々岡が立って喚いている。朝早くから(9時)にたたき起こされついて来てくれとせがまれて来たのが最後、穴に入った佐々岡が出てくる気配は無い。


「うーめーてー」
「俺を殺人犯に仕立て上げる気か」
「はっはっはー!まさか。きちんと遺書を書いてきたから大丈夫だって」
「(どこが)」

「佐々岡さーん、出てきませんか。ポッキー奢りますよ」
「いちねんぶん?」
「千円分・・・」


「死のうー死のうーわたっしは死ぬのー」

「ぽちゃんも歌えー!」
「いや、変な人に思われるから、通報されるからね。つーか名前ポンちゃんじゃないから」


そういったとたん佐々岡さんは黙りこくって急に静かになった。不気味なほど静かになって気が狂いそうなる。さっき歌ってた変な歌でも歌おうか。

「ポンちゃん、私たち幼馴染だよね・・・?」
「いやだからポン」
「孝哉さあ・・・私の名前、覚えてる?」
「は?幼馴染じゃん、当たり・・・」


ほらねって佐々岡さんが寂しく笑った気がした。


分かった気がした。

彼女が死にたい理由