それでも、私は彼女?(多分彼女だろう。)を2時間待ったのだ。

大都会の向こうでは、雪が降っていただろうし、もしかしたら積もっていたところあったのかもしれない(たとえばロシアとか)。と思えるほどに冷え込んでいた。
サンタクロースの季節だ。なんのために立てたか理解できない巨大クリスマスツリーが目立つし、それを目印にすると言っただけだったので(約束ではない)本気にするかどうかも分からない。
「あ、」
「ねえ、サンタさんって本当に居るの?」
「すみません! こら、こまってるでしょう?」
「あ、いいんです。気にしないで」


「あなたはいつもおんなじことを言うわね。少しは捻ったら?」
あたしはまっさきに、彼の台詞を聴いたときに言ってやった。阿呆なこと自分でも謂ってるっと分かってる。理解できてる、きちんと。でも感情のほうが先立ってコントロールを出来ない。
クリスマス、クリスマス、クリスマス、クリスマス!何遍も同じこと謂っている彼。無茶なこと言ってるあたし。
太陽はとうの昔に落ち、夕暮れには仕事を終わらせようとしてたけれど、それも無理だった。最後に見た時計は10時を指していた。


「たとえば、きみがここで死んだとする」
「ええ」
「そしてたら、どこへ行く?」
「其の時に決めるわ」
ふと気か付けば10時半だ。
「たとえば、きみがここで死んだとする」
「ええ」
「そしてたら、どこへ行く?」
「        」
いまならどう答えるのだろう?「天国」とでも答えるのだろうか。彼女はそういうことをまったく信じてなくて、(もちろんカミサマなんてものも。)クリスマスや年末のあわただしさを高みの見物してたみたいなところはある。いやみな感じではなく、とても羨ましそうに。


携帯なんてなければいいのにと無茶苦茶なことを思う。さっきから煩いのだ。とても煩わしい。携帯の着信履歴は彼の名前でもうすぐいっぱいになる。別にクリスマスだからといって彼と二人気で過ごしたいわけでもなく、本当にどうでもいいのだ。そういうことすべて。
むかしからそう、あのときからあたしはぜんぜん変ってないと自分では感じているけれどちがうのだそうだ。
あたしはとても変った。別に天国を信じだしたわけでもなく、神様を見出せたはずもないのに。もうそろそろ11時だわ。


11時半。この時間帯になると独りでクリスマスツリーの前に堂々と陣取ってるのが心苦しくなる。だからといってどうしようもないわけで。両隣はカップルが占領している。前のベンチでさえ。
いろいろな意味で失敗じゃなかったんだと思う。彼女と距離ができたことは(結果的にはだいぶ疎遠になっているけれど)。確信的にそう分かっててそうしたし、それでどうこうと言うわけでないけど、ときどき考える。あのままだったら本当にどうなっていたか。彼女を助けれたのか本当は全部虚像だったんじゃないか妄想?自分の欲を満たすための?時々分からなくなる。本当はどれが真実で本当じゃないか。


とうとう電話はかかってこなくなった。12時だからといって王子様とのお別れを惜しむよなイベントはない。残念ながら。
今日は星がとても綺麗で大都会東京でもここまで綺麗な星を拝めるとは思いもしてなかった。今日までは。
最近よくおもいだす今の彼じゃなくて一番大切な人のことを彼は今。
・・・・・ここまでで今日はおやすみなさい。(だって考えても不毛な、こと、だもの)






それでも、僕は彼女を2時間待ったのだ。

昔の約束を果たすために