外はこんなに寒かったなんて。まったく気がつかなかった。高級車が一台、ぽつんと止まってあった。この車にでここに来て、多分、わたしはこの車に乗せられていくのだろう、と、怖いぐらい冷静に考えている。父が死んで、母が居なくなって、住んでた場所がを失って現実を、見ていないのかも知れない。黒塗りの車はここの空気と不自然に調和していて寂しいきがする。ふと体が一瞬だけ浮いた様な感覚に襲われ一瞬ドッキとしたがそれは彼が二の腕を離したからだと分かると、少しだけ治まったような気がする。

「どうぞ、乗って」
「はい」


思ったと通りの内装で、柔らかそうなシートに腰を下ろしてから、現実感が沸いてきた。次々に不安が来て泣きたくなったけど、泣くのは一人でのほうが好いと思う。景色と一緒に不安も流れてくれたらいいのに。

「・・・・この書類にサインしてくれてもいいかな?」
「サイン・・・?」

よく見ると婚姻届のようなもので、それにサインしろと言うのだ。わたしは諦め、買われたんだたからとサインする。サインし終わって彼に渡したら滑らかな動作でファイルに閉じた。彼はこっちを向いて微笑んで「泣けばいい」そう言って抱きしめられた。




「どういうつもり!変態茶髪」

うららかな昼真に目の前にある木製のドアを壊そうかと言う勢いで蹴つり開けた黒髪美人が目の前に立って怒鳴り上げていた。

「どういうつもりって? そんなに怒ると美人が台無しだ。リッカートも驚いてるぞ」

側にいる部下、リッカートがそんなことは無いと慌て弁明していると彼女は睨みを利かせて黙らせてしまった。

「金で買た女と結婚したって、本当なの」
「本当」
「金で買うなんて最低。見損なった」
「おやおやこんな美人に見損なわれるなんて思いもしなかったね」

「てゆうか、こっちを見なさい!目を合わせろ! 人の話を聞きながらサインをするな、私は真剣に」
「悪いが私も真剣なのだよ。3日前の部下の不祥事でこんなにも書類が溜まってるのでね。情報のエキスパートなら、知っているだろう?」
「ふん、またの機会に話しましょう」

3日前、ある部下が一般人を殺害、動機は不明。私物の引渡しにサインを行っている途中に彼女が乱入してきたのだ。カツカツと威勢良く靴を鳴らしながら彼女は戻っていった。

「ウィルトン大佐は面白い方ですね・・・・・」
「彼女に惚れた、か? 大変だぞ」
「そ、そんなことはありません。断じて」





「奥様」
「は、い」
「昨日はよく御眠りになれましたか」

わたしは昨日の夜、この家に連れてこられた。



「着いたよ」

わたしはあの優しさに連れられて外に出た。中流家庭の家より少し大きい家がわたしの目の前にはあって家のインターホンを押した。わたしは人伝いにまた、売られるんじゃないかと不安になっけど、それを察してかわたしを優しく引き寄せてもらい安心したが不安は波の様に引いたり満ちたりを繰り返している。

「お帰りなさいませ」

ドアが開きメイドの格好をした女の人(歳は多分同じくらい)が出てきた。

「ただいま、アーデレ」

アーデレと呼ばれたメイドは彼の脱いだコートを壁にかけて暖炉に火を点けていた。家の中は小奇麗に掃除されてて、まず目に入ったのが6人座れる椅子とテーブル、暖炉、暖炉の近くにあるキッチン。階段に小部屋二つ、最後に一番近くにあったテレビ・・・。
暖炉をつけた様で部屋が徐々に暖まってくる。

「大丈夫、アーデレとは何も無いから」

顔にでも出てたのだろうか、恥ずかしさでみるみる顔が赤くなっていくのが分かる。

「アーデレ。紹介しよう、妻でセシリアだ」

「アーデレ・リンコットです。よろしくお願い致します、奥様。私の事はアーデレとお呼び下さい」
「初めまして、セシリアです」


とうとうこの時間が来た。娼婦として買われたんだから当然だと思う。さっきまで着ていた衣装はアーデレが洗い、今は彼女の寝間着を貸してもらっている。
「セシリア、寝てる?」
「寝、寝てないです・・・」

ベットの中、横から抱きしめられていて背骨の真ん中ぐらいまである切りそろえてない、薄いブロンドの髪から息が伝わってくる。

「髪・・・・・柔らかい」


「嫌ならいい」

そういって彼は眠ってった。わたしは不安なのだろうか、泣きそうでも泣くわけに行かない、起こしそうで怖い。朧気だけど、意識が睡魔に負けるのが分かる。