来月からはそこに通うことになっていた。あの日までは。
その話はみこを大変混乱させたが、今は納得している。

「ただいま」

ローファーを脱いで2階の自室に直後。母にはいつも注意されるが靴を整えたりはしない。そして今日もそんな日になるはずだった。

「みこ、話しがあるから、来なさい」 「え、お父さんなんでここに?仕事は?」
「お前には実は、祖母が持ってた力がある」
「は?お父さんなに言ってるの?」
「この文字がお前には読めるだろ?」
そう言って差し出された紙に書いてある文字はこれまで見たこともない文字だった。アラビア語の様な文字。しかしみこには難無く読めた。

「あぁ、やっぱり読めるんだな」

父はそういうと半ば肩を落とし気味に、話しがある、といった。ダイニングに入ると父の正面に座らされた。

「お前、みこには普通の人間が持たない力を持っているんだよ」

と言った。普通の人間が持ってない力、何のことを言っているのか理解できない。

「お父さんは落ちこぼれでね、いわゆる魔法が使えないんだ。けど、お前はその力を持ってる。だからさっきの文字が読めたんだ」

みこはその紙をひったくり、字をおった。そこには確かに入学説明書で、みこ宛てにきていた。

「しかし、お前はまだ力を持ってるだけで使うことが出来ない。だから、学校に通え。入学手続は済んである」

明日が入学式だから、早く用意しろよ。と言う父の声がみこにはすごく遠くに聞こえた1。その日の夜ご飯の時、母にも同じ様な説明を受けた。あたなはいわゆる魔女なんだ、と。

荷物はボストンバッグ一つで済んだ。教科書類は全て向こうが用意してくれる、との事。あとは、祖母の使ってた鏡を通り抜けたらいいとのこと。確かに、祖母は全身鏡や鏡をたくさん持っていた。その一つ一つをよく見ると細かい呪文が刻印されていた。全身鏡を触ってみると、鏡が波打ったように思えた。

「いつでも帰ってらっしゃい。ここはあなたの家だもの」

そう言って母は送りだしてくれたが、半面、ホッとしてる顔をしている。厄介ものだったのかな、私、とみこは思う。父はもう仕事のために会社に逃げるように行った。

「行ってきます」

もう戻れない気がした。その方がいいのかとみこは感じた。祖母が遺した全身鏡の向かい側が私の住む世界らしい。

「じゃあ行ってきます」
「ああ、教科書類は買ってあるから心配しなくていいから」

みこはこれから始まる新生活に大きな不安を持ち、全身鏡を通った。怖かったので目をつぶって通った。地面に足がついた感覚があり、みこは恐る恐る目を開けてみた。するとそこには沢山の人がいた。親子でいるひと、私みたいに一人でいる子供、肌の色も様々で、みこは圧倒された。

「ちょっと、あなた、そこに居ると邪魔になるわよ」
「あ、ごめんなさい」
「謝らなくていいわ。私はエリカ」
「あなたは?とエリカと名乗った少女は手を差し延べてきた。ブロンドのロングヘアーに薄緑の瞳が似合ってる。

「私は綾川みこ」
「みこ、よろしくね。私も両親が来てないの。一緒ね。エリカって呼んで」
「エリカもなの?」
「うん。力を持ってないから来れないの」

そういうエリカは少し寂しそうだった。みこは一人ぼっちなのが自分にもいることを知って心なしか安心した。

「とりあえず、荷物をどうかしたいんだけど…」
「みこは宿とってないの?」
「今日初めてここにきて、何にもわからなくて…」
「じゃあとりあえず、私の部屋に荷物を置くといいわ。こっちよ」