「あそこが学校が始まるまでの私の部屋よ」
みこはさっき居た綺麗な噴水があった広場、水の広場ばから約10分ほど歩いた所の家に通され、その家の2階の一室を指差した。エリカの家に着くまで、色々とみこは自分の話をした。何も知らされず、いきなりこっちの世界に来たことを。エリカは一週間前からこっちの世界に居て、水の広場が唯一本来の世界と繋がりをもっていて、だからみこを注意したのだという。また、両親が力を持ってない代わりに叔母のスージーが力を持っていて、その叔母の家に住んでいるのだという。学校は全寮制で、各人が部屋を持っているということも教えてもらった。みこは、何の情報も教えなかった両親を恨めしく思ったが、文字が読めなかったから仕方ないのかもしれないとも思った。
「エリカ、お客様ー?」
1階にあるキッチンの方から声と共にエプロンを着ている、髪は短いが、エリカと同じ髪はブロンドで瞳は深い緑色の中年女性が現れた。
「ただいま、叔母さま」
「お帰り。そちらはどなた?」
「あ、彼女はみこよ。明日から同じ学校に通う友達なの。でも寝泊まりする家がなくて困ってるの。明日まで、私の部屋でいいから泊めてあげる事、出来ない?」
「構わないわよ」
「ありがとう、叔母さま」
「綾川みこです。お世話になります」
「よろしくね。あたしはスージーだよ。この子の叔母さ」
と言ってエリカにウィンクをした。スージーは指をパチンと鳴らすと、みこが持っていたボストンバッグを魔法で浮かし、2階にあるエリカの部屋の前まで移動させ、部屋のドアを開けてボストンバッグを部屋の中に入れた。みこは生まれて初めて魔法を目にし、驚きで呆然となった。
「お嬢ちゃんは魔法を見るの初めてかい?」
みこはお嬢ちゃんは自分の事だと気づき、慌てて、初めてです、と答えるのが精一杯だった。
「エリカ、まだ日が高いからみこちゃんを案内しておやり」
「いいわ。行きましょ、みこ」
「へ?あ、うん」
水の噴水は町の中心だ。みことエリカはそこに来た。
「私たちが行く学校は、いわゆる電車的な乗り物に乗って行くのよ」
「電車じゃないの?」
「電気じゃなくて魔力で動かすの。この世界は魔力で回ってるの」
「そうなんだ」
「あれみて。学校に行き始めたらああいう格好をするのよ」
エリカが指差した先には白いローブを来た集団がいた。エリカは憧れの存在のようにみていたが、みこにはよくわからなかった。
「あの胸元の刺繍の色が違うのはなんで?」
「学年を現してるの。今年度の学生は紺色の刺繍が入るの」
「そうなんだ」
「素敵よね…。明日が楽しみ」
「そうそう、水の広場で初めて会った時、なんで注意したの?」
「あ、みこが立ってた場所は元の世界というか、普通の人が暮らす世界とリンクしているの。それがあるのは、ここだけじゃないのよ。また別の町がいくつかあるんだけど、その町からもリンクしてるわ」
「町から町にはリンクしてるの?」
「うーん、私も先週来たばかりだしよくわからない。ごめんね」
エリカが謝ることないよ、とみこは突然の謝罪に少し慌てた。それから二人は町を散策、と言ってもみこはエリカに案内されるだけだったが、町を一回りした。よくよく見ると元の世界とそう変わったところはあまりなく、それはみこにとって意外だった。けれど、その中でもやはり箒を売っていたり、杖や指輪を売っていたりと元の世界との違いを感じていた
「エリカは初めてこっちの世界に来たときはどんな感じがした?」
「え?私?小さいころからあっちの世界とこっちの世界をしょっちゅう行き来していたから、違和感はなかったかな」
「そうなんだ」
「みこは、あるの?違和感」
「正直言って、あっちの世界とあんまり変わりないように思う。けど、あんなに沢山の箒や杖を売っているところには驚かされたかな」
「うふふ、そうなんだ。…もう6時よ家に帰りましょ」
エリカは腕時計も見ずに時間を当てた。みこは腕時計で確認した。
「…時計、つけないのにわかるの?」
「魔法でわかるわよ。そんなの。みこもそのうちに使えるようになるわ。」
そういいながらみこたちは帰宅した。