「好きです。付き合ってください」
「ごめんなさい、私、好きな人が居るの」
「…っ」
「話しってそれだけ?私はもう帰る」

遥は同じクラスのイケメンの類に入るであろう男子に告白されていた。今月に入って五人目だ。男には興味がない遥にとっては辟易だ。親友である百合子が待つ靴置場へと急いだ。

「ごめん!待ったよね?」
「今来たとこだよ」
「じゃあ帰ろ」
「うん」

遥同様髪の毛の長い百合子は、その髪の毛をポニーテールにしている。遥は髪の毛の量が多くゴムが切れるからという理由とまとめるのが面倒という理由から髪の毛をまとめてない。遥は可愛い系だとしたら百合子は美人系だ。百合子には彼氏が最近できた。しかし、中学から同じ学校の二人は途中まで一緒に帰るのが習慣になっていた。遥は叶わない恋って、残酷よね、と百合子の顔をみて思う。百合子は賢いし彼氏も優しいし敵わない、と思う。

「じゃあまたね」

遥は百合子に恋人みたいに甘えたいと思うが、傷つくのが怖く毎回自分の気持ちを抑えてしまう。抑えなければ、と思う。

「うん、また明日」

帰り道、遥は男だったらいいのにな、と思う。そしたら、百合子の彼氏なんかには負けないのに。

学校の人気者。都幾川圭佑。運動も勉強も優秀な成績を修めている。そんな彼は女子にも男子にも人気がある。遥にとってはどうでもいいことだ。ある日、百合子から手紙を遥は渡された。

「遥、この手紙、都幾川からだって」
「へ?」
「だから都幾川から手紙」
「分かった。ありがと」

百合子から渡された都幾川からの手紙には携帯番号とアドレスと放課後学校の屋上に来るように書かれていた。百合子と今日も一緒に帰りたかったが、後でクラスの人達の前で話しかけられると考えるだけでげんなりとして、放課後屋上に行こうと決めた。

「ごめん、今日は一緒に帰れないや」
「分かった」

授業開始5分前のチャイムが鳴った。百合子はじゃあまた明日、と言って理系クラスに戻って行った。都幾川の用事って何だろう。

「寒い〜」

遥は放課後の屋上に行った。4月とは言え、まだまだ風は冷たかった。

「遅れてすまん」
「あ、都幾川君。用事って何?」
「まさか本当に来てくれると思わなかった」「来なくてよかったの?」
「いや、来て欲しかった」
「そうなんだ。ところで、用事って?」
「俺と付き合わない?」
「は?」
「だから、俺と付き合わないかって」
「マジで言ってるの?」「うん。付き合えば、告白してくる奴も、お互いにかなり少なくなるし。どう」
「え」
「その気になったら連絡して。番号とアドレスも書いてあるから。話しはそれだけ」