「あ、そう」

このぐらいの会話なら百合子と一緒に帰れたかもしれないと思い少し都幾川に怒った。

その晩、遥はベットに転がりながら、携帯アドレスと番号が書いてある手紙を読み返していた。百合子には、きっと応援されたり喜ばれたりするからそれが悲しくて言えなくて、悶々としている。いつまでも悶々としているの訳にはいかず、圭佑に、こんばんは、遥ですとメールを送る事にした。そうしたらメールありがとう、都幾川ですと返信がすぐあった。次の日、学校に行くと大変なことになっていた。それは百合子とその彼氏の岡部君と三人で、学校に登校して、遥は知った。

「圭佑君と付き合ってるんだよね」
「は?」

クラスメイトから聞かされて遥は頭に血が上った。遥はメールで放課後会う約束を都幾川と取り付けた。

「今井さんからメール嬉しかった」
「都幾川君、私、いつ付き合うと言った?言ってないよね?なんでこんなことになってんの」
「面倒くさかったから付き合ってる人がいると言って誰か聞かれたから今井さんの名前出した」

遥は血の気が段々下がってるのが分かった。高校生活に対する不安が増した。こういう時、百合子に相談したかったが、岡部君という彼女の彼氏との大切な時間を奪うようで気兼ねを遥はしている。

「最低じゃんそれって。私の高校生活かえせ」
「さすがにそれは傷つくわー」
「台詞棒読みなんですけどふざけてる?」
「ふざけてました。でも俺は遥と本気で付き合いたいと思う」
「お断りなんですけど」
「なんで?」
「なんでって…私、都幾川君の事好きじゃないし」
「嫌いなの?」
「…嫌いじゃない」
「じゃあいいじゃん」
「ていうか、去り気に下の名前で呼ばないでよ」
「いや、俺たち付き合ってるし」
「告白対策ででしょ。二人きりの時は名字で呼んでください」

普通本人を前にして嫌いだなんて言えないよ、と遥は思う。そもそも遥は百合子が好きだ。でも圭佑はなにせイケメン中のイケメン。遥も圭佑が嫌いとか言う訳ではないので断りきれない。今日も百合子と帰れなかった。それに、振りつづけるのも気まずいし、告白がされなくなるのなら、それでもいいのかな、と遥は思った。

「分かった分かった。付き合ってあげる」
「マジで」
「そんかわり、私、好きな人が居るから都幾川君は1番になれないよ」
「それでもいい」
「マジで」
「うん。大まじめ」
「あれだよ、キスとかもなしだから!」
「仕方ないなぁ」
「登下校も別で告白された時は名前だしてもいい」
「手を繋いだりは?」
「それくらいはいいけど…」
「じゃあ早速帰ろう」

そういうと圭佑は遥の右手をとり放課後の屋上を後にした。圭佑と遥が付き合っているという噂は一気に学校に広まった。遥は初めはどんな嫌がらせをされるんだろうとドキドキしていたが、目立った嫌がらせは付き合って三ヶ月たってもなかった。