百合子きっと私になんか興味ない、遥はそう思ってる。だから、時々こうして遊んでくれるだけで満足しなくてはならない。親友だと言ってくれるのは嬉しかったが遥にとって、それはまた、失恋であった。そうなる事は簡単に予測できていたが、やっぱり百合子が岡部君の事を話す度に、岡部君から百合子の話しを聞く度に心は締め付けられていく。

それから百合子と遥はショッピングモールに行ったりプリクラを撮ったりした。明日は学校も休みなので、家路についたのは19時を回っていた。夕食を食べ終え、遥が自分の部屋に戻った時、携帯の着信音が鳴った。ディスプレイには圭佑からかかってきた。遥はうざいと思いつつ電話にでた。

「用件はなに」
「あのさ、明日学校休みだから」
「無理。無い」
「一応付き合ってるし、いいんじゃね」
「テスト勉強があるから。ていうか、私疲れてるから」
「ちょっと待った、テストって来月じゃんか」
「だからなに。用件がなかったらもう切るから」
「明日1時間だけでいいから遊ばない?映画観るだけでもいいから」
「…わかった。映画観るだけね」
「駅前の噴水に1時でどうかな」
「用件はそれだけ?」
「あと今井さんと話したいとか思ってるんだけど」
「あっそ。じゃあ切ります」

遥は圭佑が慌てる声を無視して電話を切った。翌日、遥は圭佑が待つ駅前の噴水に向、ピンクのプリーツスカートと白いトップスという恰好で出かけた。待ち合わせ場所には圭佑がいた。

「おはよう」

遥はそういうと圭佑は少し照れたようなそぶりをして、遥の手を握り映画館の方へ連れて行った。二人は今流行りの映画を観た。その間中圭佑は遥の手を離そうとしなかった。離れてしまうようで怖かった。帰りの話題の中心はやっぱり先程観た映画のことだ。

「都幾川君はああいうのが趣味なの?」
「趣味だね。意外かな」
「うん。フランス映画とか観てそうな感じだから」
「コメディーより哲学?」
「そうそう」 「俺ってそんなイメージなんだ」
「ところで、手離してくれない」
「嫌だ」
「は?私、そういう趣味じゃないから」
「じゃあ大田さんだったら良い訳?」
「はあ?ふざけないでよ」

遥は佳祐の手を無理矢理解いた。爪もたててやった。

「大田さんには」
「聞きたくない!私もう帰る」

そう言って遥は家路についた。夜、寝る前に佳祐から電話があったが泣き腫らした目と鼻で、彼と話したら泣いてたことがばれるのが嫌で、結局電話にはでなかった。月曜日、火曜日と時間は過ぎていった。佳祐からメールはあるものの全部無視していた。