「班長!回収率が半分ってどういう事ですか」

黒い髪の毛を一つにまとめ、黒渕眼鏡をかけ、スーツで身を固め、いかにもしっかりとしている一人の女性、たんぽぽ組副班長のアケミ、が班長である長居キョウスケのデスクに詰め寄った。キョウスケは右手で耳を掻きながら、さんさんと輝く太陽の暖かさに身を委ねてる最中だった。要は仕事を放棄していた。そんなんだから、彼が着ているスーツも心なしかよれよれに見える。

「あー…?」
「そんなあからさまにやる気の無い返事しないで下さい」

そんなことよりも、と他の班と比べて回収率が半分以下ってどういう事ですか。アケミはストレスマックス状態だが、努めて冷静に言った。

「そりゃお前、やる気に比例してるんだろ」
「では仕事して下さい」
「お前、俺は日々仕事してるっつーの」
「ひなたぼっこが仕事ですか」
「これは休憩なの。日々生きてる事が修行であり仕事なの」
「一回死んでるじゃないですか」
「そんな細かいこと言ってるといつまで経っても結婚できな」

アケミはデスクに置いてあったアルミでできた灰皿をキョウスケに投げつけた。アケミちゃん痛い、とキョウスケの声が聞こえる。アケミはその声を無視して、ノルマは一日三人ですからね、と言って回収に出かけた。

二年前、アケミは死んだ。キョウスケはそれよりずっと前だ。死んだ二人は死後の世界、いわゆる天国から魂の回収係として派遣された。死んだ人間の魂はこの世をさ迷うことも多い。その魂のあの世への道案内係として彼らは存在している。魂の道案内をいわゆる回収と読んでいる。キョウスケとアケミが現在所属しているたんぽぽ組は原因不明で死んでしまった魂の回収を請け負っている。たんぽぽ組はキョウスケとアケミの二人しか今のところいない。その他にも事故死を扱うすみれ組、病死を扱うぼたん組、殺人などの事件死を扱うれんげ組、寿命を扱うはす組、自殺を扱うきく組が存在している。これらは通常5人から10人で構成されている。しかしたんぽぽ組だけは年中欠員である。なので、新しく配属されたアケミは自動的に副班長になったのだ。また、原因不明で死んだ魂は他の班に比べて数がすくなく、他の班の手伝いもしばしばしたりする。キョウスケはパイプ椅子から立ち上がると、回収リストをもって部屋を後にした。

「キタガワ ユウマ君?」

キョウスケはアケミから渡されたリストの一番上の名前を読み上げた。キョウスケはあれからリストに載ってあった死に場所に来てみた。そこは桜並木が美しい土手であった。

「おじさん誰?」
「おじさんじゃなくて魂回収のキョウスケ」

魂回収と聞いてキタガワユウマと思われる15歳くらいの少年は血相を変えて逃げようとするが、その前にキョウスケが彼の服を掴んだから逃げられない。しかし少年も諦めず、暴れている。